気がつくと無性にお腹が空いていて、目の前のモノをひたすら食べていた。好きなものを食べると良いと教えてくれる人もいれば、バランスよく色々食べなさいと教えてくれる人もいた。僕は何を食べても大差はないと思っていた。
そのうちに体が大きくなってきて、食べることにも疲れてきた。周囲の仲間も同じような感じだ。ただし、この頃になると体格差は歴然としていきていて、そもそも食べることの嫌いな子は見た目も小さかった。僕も平均より小さかった。
僕たちは「蛹(さなぎ)」になる準備を始めた。ここに生まれた限りは、蛹になって成虫になり、この国の役に立つことが当然の任務なのだとよく見える大きな看板に書いてある。どうやらそういう宿命みたいなのだ。本当か?
蛹になるということは意外に簡単だ。それぞれの部屋に入り、自分の体を溶かして部品を作り、組み立て直せばいいだけだ。その部屋には「設計図」も置いてあるので、安心この上ない。さらには、わからなくなったら係りの人を呼べば良い。
その部屋は半透明で周囲の部屋の様子もうかがえる。みんな設計図を信じて、一心不乱に作業している。誰も信じて疑わず、時間だけが過ぎていく。不器用な僕は部品をいくつか失くしたが、探すのも面倒だったのでそのまま完成させた。
ほぼ2年くらいかかって、形が整ってきた頃に扉のドアがあいた。みんなぞろぞろと出てきたら、「蝶(ちょう)」になっていた。でも、誰が誰なのか区別もつかないほど見た目が同じの蝶になって集団を組んで飛び立っていった。
僕はいくつもの部品が欠落していたので、飛べなかった。歩いて集合場所までたどり着き、周囲の「蝶」にヒアリングすると「本当に幸せだ」と口を揃えて主張する。「おまえは大丈夫なのか?」と気の毒そうに僕を眺めている。
僕は社会から「不良品」というシールを貼られた。でも、貼られてしまうと自由だった。みんなから役立たずとか、ちゃんとやれとか罵られたけど、結局「自由」が待っていた。それは政府の影に怯えることなく生きて行く「自由」だった。
あのときに「設計図」の通り組み立てしていたら、僕も普通の規格品になっていただろう。不器用で組み立て出来なかっただけで、そこからはみ出せて良かった。あの部屋に入れられてしまっては、絶対に気がつけない秘密があるのだ。
- 友達に相談して、その助言通りに行動しない。まだ見えてないから。
- 「設計図」は目の前に置いてあるが、やすやすと信じてはいけない。
- 自分の直感を大事にして生きること。その他多勢にならないこと。
まだまだ秘密があるのだが・・・社会が崩壊してしまうので、教えてはもらえない。でも、そこにこそ「真理」がある。僕たちがキラキラ輝いて生きるための秘密があるのだ。それを解き明かして、人生が始まる。
もうすっかりと忘れてしまったかもしれないが、蛹の頃の記憶を思い出そう。そこにすべての謎をとく鍵がある。そしてもう一度そこに戻れば、生まれ変わることも可能なのだ。
今日の話は、ここでおしまいです(*^o^*)楽しめましたか?
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